ARTIST

2022
suma
sumaの作品は、いくつものイメージと情報がレイヤーとして複雑に重なりながら構成されている。薄く削ったベニヤ板の上にシルクスクリーンで新聞やチラシを印刷し、その上にポップな動物のモチーフを描いていく遊び心たっぷりの作風は、絵を描くことが大好きだっという幼少期、祖母とともに新聞にクレヨンでお絵描き遊びをしていた記憶とつながっているという。
新聞やチラシというものは、分かりやすい日常のメタファーだ。地域の小さな出来事から社会の重大事件まで、日々の有象無象の情報が印刷されているいわば人間が生きる痕跡だ。にもかかわらず、何気ない日常が往々にしてそうであるように、とくに大切にされることもなく日々消費されていく。じっくり読まれることさえないまま。
ポップにデフォルメされた動物や文字の表現は、海外アニメーションやグラフィティーなどsuma自身が親しんできたものとリンクしているという。強いメッセージを大々的に謳うより、身近にあるものや世の中の流れを切り取って、大衆にとって親しみやすいものとして提示することで何かを感じ取ってもらいたいという姿勢の表れだ。
新聞やチラシの内容と描かれている動物には、よくよく見るとつながるところがあり、社会に対する皮肉やメッセージが仕込まれている。しかし、sumaは作品をよく見て考察することを強要しない。何気なく作品を見たときの「ポップで可愛い動物の絵」という印象もまた作品の持っている要素であり、無意識に人々が共有している動物の姿として真実であるからだ。彼が大切にしているチャップリンの言葉に「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇である」という一節がある。動物や人間の本質も同じで、遠くから見れば可愛く楽しく素敵に見えるが、近づいてみるとグロテスクな一面が見えてくる。近くで見るか遠くで見るかは、鑑賞者自身に委ねられている。(©︎kutsuna miwa)
1998年、北海道生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻版画在籍。
動物や植物、自然などの地球上で共に存在するものたちとの関わりについて、普遍的な印象またはアイコンとなるイメージを引用し表現している。
物体の外身を包んでいる一般的な特徴や情報に焦点を当て、それらを掻き集めて行くことで人間が無意識的に実像だと思い込んでいる解釈は、実際には虚像であるということを作品を通して提示したいと考えている。
本作品群の制作における原点としては、カートゥーンまたはキャラクターを使用した製品が持つ偏見的且つ過剰な表現から着想を得ている。
近年の個展に、「suma Exhibition”TITLE ROLE”」(RISE GALLERY、2022)、グループ展に、「KUMA EXHIBITION2022 (ANB Tokyo、2022)、「BEYOND 〈JAPAN MODERN ART EXHIBION〉」(333 Gallery、台湾、2022)、「SHIBUYA STYLE vol.15」(西武渋谷店、2021)などがある。