ARTIST

2022
まつもとこうじろう MATSUMOTO Kojiro
才能とは何かを問われている。
まつもとこうじろうは自身について「才能がない。自分のセンスや個性を疑う。そもそも美術が好きな方じゃないし、向いているとも思わない」と、あけすけに語る。では才能の正体とはいったい何なのだろうか。優れたアーティストを前に、その才能に触れたつもりになり、才能を信仰し、才能に振り回されつづける私たちは、実のところ才能の有無をどう線引きしているのだろう。
まつもとこうじろうの作品は明確な引用と再構築でできている。手塚治虫の漫画やロボットアニメ、日本画、ファッションアイテムなど、キャラクターやモチーフ、デザインを引用してつなぎ合わせ、あらたな作品に構成しなおす。それは、無から有を生むことだけをアートだとする、オリジナル史上主義ともいえる論調に対する真正面からのアンチテーゼだ。
まつもとは引用や真似という言葉を使って自身の表現を説明するが、異なる時代のモチーフを組み合わせた、まるで壊れたタイムマシンのような世界はもはや彼にしか表現しえない奇妙な魅力を纏っている。いくつかの限定されたモチーフやキャラクター、配色を繰り返し作品に登場させ、そのたびに少しずつ変化を加えアップデートさせていく手法は、自分自身にわざと厳しい制限を課して、設定したルールのなかでどれだけ表現を磨き上げられるのか自分自身を常に試しているようだ。(©︎kutsuna miwa)
東京生まれ、在住。宮城県仙台市育ち。多摩美術大学大学院美術研究科卒業。
幼年漫画のようなルックスの少女と生き物を作品内に描きつつ、日本の美術教育を経てこれまでに得た技法や日本の絵画の構図と、漫画の扉絵に見られる表現方法を織り交ぜることで、世界観を構築している。