ARTIST

カネコタカナオ
XY 01
2022
Photo by hiroshi noguchi / courtesy : Art Front Gallery

カネコタカナオ KANEKO Takanao

カネコタカナオの作品に登場するキャラクターは、漫画とグラフィティが融合した独特の画風で描かれる。近年の作品はさらに、タイポグラフィーや幾何学模様、そして実際のコミックのコラージュを層構造で構成した新たなスタイルとして完成させている。

インターネットの領域が社会全体に広がり、日常にSNSが浸透するとともに私たちはその利便性だけでなく、匿名性から生まれる誹謗中傷やヘイト、極端な正義、陰謀論といったある種の弊害とも付き合わざるを得なくなっている。偏った情報や発信を「ノイズ」と捉えて無視することもできるが、カネコは人間が処理しきれない過度なノイズの在り様に強く興味を持ち続けている。

様々な姿で描かれるモンスターのキャラクターは、そうしたノイズに晒されたときに生じる人間の二面性を表現しているのだという。モンスターは鋭利な牙やむき出しの眼球が恐ろし気に描かれているものの、どこか自滅的で滑稽さを滲ませているのが印象的だ。リアルな社会とネットの世界で自身のキャラクターを使い分ける人間の複雑性や、膨大な情報を受け止めるうちに偏った思想を強固にしてしまう様子などSNSのなかで変容していく人間性を取り上げて、モンスター化していくキャラクターと重ね合わせている。

社会システムと人間の進歩スピードが乖離していくことで人間側がシステムのコントロールを失っている状態や、感覚の共有が進むことで個性を放棄していくだろう人間社会の未来予想図など、扱うテーマはシニカルだが、独特の諧謔的表現からは強い社会批判は感じられない。それよりも、どこか可愛らしく憎めないキャラクターを通して、人間社会への強い好奇心と深い親しみを感じることができる。(©︎kutsuna miwa)



1977年、埼玉生まれ。武蔵野美術大学短期大学部美術科卒業。

近年の個展に、「Fragment」(アートフロントギャラリー、2022)、「分解ノイズ」(THE blank GALLERY、2016)、グループ展に、「Art Asia 2018」(Kintex 1、韓国、2018)、「アートの畑」(伊勢丹新宿店アートギャラリー、2016)などがある。