ARTIST

2022
金澤シュウ KANESAWA Syu
金澤シュウの作る世界は陶芸から始まり、絵画へと拡張している。もともと、笠間焼の産地である茨城県立笠間陶芸大学校にてアカデミックで伝統的な陶芸を学んだ金澤だったが、次第に独自に陶芸を再解釈したユニークな形をつくり上げていく。
壺の部位は、口・首・腹・腰など人体の部位と同じ名称で呼ばれており、そのことから金澤は壺を、意志を持つひとつのキャラクターとして見立て、顔や羽、腕などのパーツを生やしていった。「コンタクター」と名付けられたそのキャラクターは金澤の言葉にならない心の内を表現する代弁者であり、作品のひとつひとつが短編小説のように独特の世界観を持っている。そして現在、その物語は絵画の領域に広がりさらに深められている。コンタクターの中性的で端然としたたたずまいは、サン=テグジュペリの書いた星の王子様のように、永遠に少年のまま変わらない素朴さや純真さ、そして孤独や困難に寄り添うやさしさを感じさせる。
もともと二次元文化が好きだったという金澤の表現には、PixivやTwitterで親しんできたイラストや、初音ミクなどのボカロ文化からの影響があるという。かつてアートとネットカルチャーは関わりのないものとして区別されてきたが、今やごく自然にネットカルチャーに親しんで来たアーティストが数ある表現のうちのひとつとしてそのエッセンスを取り入れる時代になっていること、そして美術はもちろん、陶芸においてもその流れがあることを金澤の作品は示している。陶芸や美術が、アニメやボカロ、デザインといったポップカルチャーのなかから誕生したメディアと融合することで、新しい時代に即した新しいメディアが生まれようとしている。(©︎kutsuna miwa)
1992年、茨城生まれ。茨城県立笠間陶芸大学校研究科卒業。
東京造形大学でインダストリアルデザインを専攻していたが、より現実感のある素材で制作がしたいという思いから大学を中退する。陶芸の素材感に着目し、2017年に茨城県立笠間陶芸大学校の研究科を卒業した後、自身の窯を構える。
個人で制作を開始してからは「コンタクター」という架空の生命体を陶芸の素材を用いて発表。現在はコンタクターを題材とした絵画制作にも取り組み、表現の幅を広げている。
ネットが普及しSNSが盛んな現在でも尚、人間同士は簡単に通じ合うことは難しいという思いから、コンタクターは他者と作者である私自身を繋ぐ存在(キャラクター)として、人々がより身近に感じる漫画やアニメといったポップカルチャーを軸にしている。
近年の個展に、「楽園はすぐそこに②」(atelier samac、2020)、「Exhibition of Syu-楽園はすぐそこに-」(笠間工芸の丘、2020)、「孤独というより退屈」(atelier samac、2019)、グループ展に、「Daydream」(MASATAKA CONTEMPORARY、2022)、2022 「Born New Art vol.2」(pls art gallery、2022)、「Shirokane December」(Art Galley Shirokane 6c、2021)などがある。