ARTIST

山口歴
OUT OF BOUNDS EXPERIMENT NO. 2
2022
© 2022 MEGURU YAMAGUCHI
© 2022 GOLD WOOD ART WORKS

山口歴 YAMAGUCHI Meguru

絵画の長い歴史の中、数多の線が引かれ、造形が作られ、色彩が考案されてきた。その最も新しい地点に生まれた表現のひとつに山口歴の作品がある。

キャンバスの枠組みを超えて筆跡そのものが立体となる山口の表現は、アクリル絵具などで描いたブラシストローク(brush stroke/筆致)をレーザーカッターで切り取り再構築する「カットアンドペースト」という山口独自の手法も用いており、絵画の概念を彫刻的な領域にまで拡張させた。

このユニークな表現が生まれたのは2016年、山口が渡米して10年が経過した年にニューヨークで発表された“OUT OF BOUNDS”シリーズが始まりとなる。あらゆる創造や発明が不自由のなかから生まれるように、日本に帰りたくても帰れない10年の歳月は “OUT OF BOUNDS”を作るうえで必要な工程だったと山口は振り返る。現地で出会った黒人コミュニティや彼らの作る音楽、グラフィティ、ストリートカルチャーから得たクリエイティビティや逆風に対する態度は山口に大きな影響を与え、常に「誰も見たことのないカッコいい表現」を求める姿勢につながっている。

山口の表現は一作品ごとに全く様相を変え、スタイルを変えてくる。色の重なりもグラデーションも造形も常に変化を与え続ける創作への態度は、既成概念を壊して新たなスタイルを確立するのではなく、絵画やアートに新しい表現の選択肢を増やしているようだ。(©︎kutsuna miwa)



1984年、東京生まれ。

2007年に渡米し、現在はニューヨーク・ブルックリンを拠点に活動している現代アーティスト。

絵画表現における基本的要素「筆致/ブラシストローク」の持つ可能性を追究した様々な作品群を展開。代表的作品群”OUT OF BOUNDS”では「固定概念・ルール・国境・境界線の越境、絵画の拡張」というコンセプトのもと、筆致範囲を制限してしまうキャンバスの使用を止め、筆致の形状自体をそのまま実体化する独自の手法によって、ダイナミックで立体的な作品を制作し続けている。

90年代から2000年代初頭の東京ストリートカルチャーの変遷を経験して育ち、渡米後は、ALIFE、BILLIONAIRE BOYS CLUB、FTC、NIKE等アメリカのストリートカルチャーを代表するブランドの他、ISSEI MIYAKE MEN、LEVI’S、OAKLEY、UNIQLOといった企業とのコラボレーションも行なっている。

近年の個展に、「SHADEZ OF BLUE」(+81 Gallery、2022)、「LISTEN TO THE SOLITUDE」(銀座蔦屋書店、2021)、グループ展に、「Untained Abstraction」(GR Gallery、アメリカ、2018)、「Kinetic」(KINFOLK 90、アメリカ、2018)などがある。