ARTIST

2022
Rooo Lou
顔は自己と他者を区別する装置であり、最もわかりやすいアイデンティティでもある。はるか昔から人は顔や表情を人体における特別なパーツとして、どのように描くかを試行錯誤し、ときに顔を隠すことで匿名性や普遍性を表現してきた。
ミニマルな線と心地よい色彩で描かれるRooo Louの作品には、老若男女さまざまな人物が描かれるが、どの人物の顔も鼻や口はなく目の位置に黒いふたつの点が並ぶだけだ。あえて顔の造形を極限まで簡略化することで、人間の表情がもたらす喜怒哀楽や内に秘めた思念を恣意的に軽減し、人間の造形の美しさを軽やかに表現している。人間のフォルムをシンプルな一本の線として突き詰めた具象的表現はポップでありながら、感情や物語性を託されたキャラクターとは一線を画している。
表情がない反面、ファッションやヘアスタイルのバリエーションは多彩で、リアルタイムの時代性と洗練された都市の匂いを纏っており、没個性的に描かれている一方で、街ですれ違った誰かを思わせる不思議な親近感を併せ持っているのもRooo Louの特徴だ。表情のない彼らはいわば鏡のような存在で、見る人が変わればその表情は笑顔にも泣き顔にも自在に変化し、憧れの人や親しい誰かにも姿を変えるのかもしれない。(©︎kutsuna Miwa)
1988年、大阪生まれ。デザイナーとして活動後、イラストレーションでの表現に移行し、様々な企業のグッズや広告制作などを手掛けている。近年は作品制作を中心に活動し、国内外で展示を行なっている。並行して広告ビジュアルの制作やアパレルメーカーとのコラボグッズの企画、制作にも幅広く携わる。
近年の個展に、「POLYTOPE」(Gallery Ascend、香港、2022)、「Pale Light」(GALERIE OVO、台湾、2021)、「base on balls」(SkiiMa Gallary at 心斎橋PARCO、2021)、グループ展に、「Maison Ozmen Group Show」(Maison Ozmen 、フランス、2021)、「Satelite Village」(Gallery Ascend、香港、2021)、「Rebirth」(YK PRESENTS、韓国、2021)などがある。